「センパイに会いたい」今のわたしが作られるまでの軌跡

弁護士

樋田 早紀さん

といだ さき

岐阜県出身。2014年3月人間科学部卒業。2016年に司法書士試験、2019年には司法試験に合格。
2021年にイマージェント法律事務所を設立し、弁護士の立場から個人や企業のサポート、社会課題の解決に取り組んでいる。

大学時代に身につけた「行動力」が
弁護士としての今日を切り拓いた。
人々の笑顔のために、絶えず歩みを重ねる毎日

2021年に自らの法律事務所を設立し、企業の顧問弁護士、個人や中小企業を対象にした「町の弁護士」として活躍する樋田早紀さん。「結婚の自由をすべての人に」訴訟の東京弁護団にも所属し、性の多様性にまつわる諸課題にも意欲的に取り組んでいる。現在は法律家の立場から困難に直面する人々を支える樋田さんだが、実は大学入学当初は臨床心理士を目指し、人間科学部へ進学した。

「高校時代に思い悩むことが多かった経験から、いずれは人々を心理面からサポートする仕事に就きたいと考えるようになりました。そこで、心理学を学べる関東圏の大学を探し、神大を受験しました」

入学後は、好きなことを追求できる神大の自由な校風のもと、臨床心理学の研究やサークル活動などに精を出した。その中でも特に印象的な経験となったのが、ゼミの一環で福島県を訪問したことだという。

「当時の福島県といえば、原発の問題が今よりもずっと深刻な影を落としていて。子どもたちは外に出て、自由に遊べずにいました。ゼミ合宿の際に、体育館で子どもたちと一緒になって遊び、楽しい時間を過ごしましたが、一方で彼らが限られた環境で必死に生きていることを強く実感。そのときに、ただ受動的に情報を受けとるだけで、自ら積極的に知ろうと行動しない限りわからないことがあると改めて理解したんです」

そんな福島での経験は、行動することの大切さを教えてくれた。その学びは、後の人生にも大きな影響を与えることになる。

樋田さんは大学での4年間を通して臨床心理士を目指して研究に励んだが、挫折を経験し、道半ばで卒業することに。しばらくは落ち込む日々が続いたものの、「このままではいけない」と一念発起し、司法書士だった母親の影響で司法書士を目指すことに決めた。猛勉強の末に合格を勝ちとると、予備校の恩師から司法試験の受験を勧められ、さらに勉強を重ねる。そして念願の司法試験に見事合格した。挫折しても立ち上がり、前に進む。その歩みを叶えたのは、大学時代に得た行動力だ。

「弁護士業は、人との関わり合いで成り立つ仕事です。相手の気持ちに向き合ったり寄り添ったりする大切さは、人間科学部で学んだと思っています。心理学を専門とする業種ではありませんが、神大での経験が活きています」

樋田さんは「行動を起こすのに遅すぎることはない」と話してくれた。社会が大きく変化し、絶えず困難や課題が生まれる中でも、彼女は目の前の人々を笑顔にするための行動を重ねていく。

MY TURNING POINT

大学時代には、仲間とアメリカ横断旅行を敢行。レンタカーを借り、2週間をかけて大陸を西から東へ駆け抜けた。大まかな目的地だけを決め、あとは体当たりだったのだとか。
「最終日のニューヨークで宿が見つからず困り果てていたところ、偶然出会った日本人の方に助けてもらいました。当時は肝を冷やしましたが、今ではいい思い出です(笑)」

※取材当時の内容です
(2024年3月発行「神大スタイル340号」より)

RANKING